唐獅子牡丹とのひと時

昨日の記事に書いた純和風の入れ墨の方との話を続けましょう。

あ、最初にお断りしておきますが今日のこの記事は、ADHDの何かに参考になるようなものではありません。単なる貴重な体験話です。

では、参ります。

それは一泊二日の東京で昼前の銭湯に行った時の事。入浴を終えて脱衣ロッカーの前でしゃがみこんで手荷物の整理をしていた時です。

頭の上から東京イントネーションで「何してるの?」と声が聞こえ、ふと見上げるとシャープな目つきの男性がいらっしゃり、その上半身には肌に直接唐獅子牡丹の様なデザインがなされていました。

「服着ようとしてるんです」などと当たり前のことを言うのは、この場合は不適切な発言であると判断し、「写真の整理をしてるんです」と更に不適切を越えた不可解な返答をしておりました。

実際、手元には結婚式の時の写真があったので、銭湯で写真整理という辻褄の合わない言葉が口をついてしまったのです。

ところがシャープなお兄さんはその写真を見て「結婚してるの?」と急に口調と目つきがソフトに変わり、何故か名刺を下さりました。

下の名前は覚えてないですが苗字は某芸能人と同じで、通常の名前の漢字には使われない「哀」という字が使われていたのでハッキリ覚えています。それを見て欲しかったのでしょうね〜。

シャープ兄さんは「〇〇(小さいデパートの様なものですが、昔の事で名前も場所も忘れてしまいました)まで一緒に行こう」と脈絡の無い事を言われましたが、ここは取り敢えず従っておこうと二人で東京散歩に出かけることになりました。

すると道の途中でシャープさんは女の人に「〇〇ってどこにあるの?」と聞いております。女の人は「ここをこう行って、こう行ったらそこに〇〇があります」と教えてくれたその時です。信じられない事が起きたのは。

シャープさんはその教えてくれた女の人にお礼を言うかと思っていたら、大きな声で「ホンマかぁ~!!」と怒りの形相で怒鳴っちゃったじゃありませんか。まったく、ホントに全く分けが分かりません。

怒ると大阪弁になるなんて、マンガの登場人物のようです。

女の人は混乱と驚きの表情で去っていきました。そりゃあ人に道を教えて怒鳴られる事になるとは夢にも思っていなかったでしょう。

私も夢を見ている様でした。悪夢という名の。

果たして、その小デパートに到着するとエスカレーターで上の階に上がり、ある洋服店に向かいました。どうやらそこの店主がシャープさんの兄貴分に当たる様な方らしく、何か手土産の様なものを渡しております。

一方、兄貴分らしき人は「ここには来るなっていったでしょ」と迷惑そう。そして私の方を見て「この人は?真面目そうじゃない。」と聞き、シャープさんは「ええ。かたぎ(一般人)です」と紹介。ついてきている意味がいつまでたっても分かりません。

そして兄貴分さんに「来るな」と言われたシャープさんは、早々と帰り始めました。

その帰りの光景は一生忘れられません。他の店のかたぎと思われる店員さんが全員出てきてズラッと並び、怯えたような緊張の表情でシャープさんと私にまで「お疲れ様です」と頭を下げるのです。

店員さん達の怯えた表情が気の毒で仕方がありませんでした。私は私でひきつった笑顔で手を振りながら「違いますねん。私、違いますねん。怯えないで下さいな。」と人畜無害の表情で表すのが精一杯でした。店員さん達も兄貴分さんもこの二人連れの関係は不思議で仕方なかったことでしょう。

しかし、恐怖で服従させるというのは、本当に虚しい事だなと痛感しました。権力者が権力で服従させるのも同じ虚しさがあると察します。

さて、デパートを出て、私もそろそろ解放されたいと感じておりましたら、シャープさんから「じゃあ」とアッサリその時期がやってまいりました。「名刺に電話番号書いてあるから、また連絡頂戴よ。」と、我が人生最恐の人脈が形成される時がプレゼントされました。

ノーサンキューとは言いませんでした。言えませんでした。

ええ。その名刺とは東京で別れましたとも。

君子危うきに近寄らず。

じゅうぶん近づき過ぎましたけど!

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